タテガキ

2蛇足

2026/07/20 13:41 公開

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※地に落ち読後推奨
 本編の情緒を損ないます。

 その日は突然訪れた。
 ぼくはあのバルコニーのない居室でその時を待つ。
 突如として現れた精強な帝国兵によって一点突破されたサンテネリ王国は、シュトロワまで帝国兵の侵入を許していた。
 前世で話の種に聞いたところの斬首作戦って呼ばれるものに近しい状況だね。
 そして、王家の守護に近衛はなぜか呼応しなかった。
 なにせ今の王はその無能さで近衛総監を死に追いやった愚物だから、守る価値すらないのは当然だろうね。
 固く閉じられた戸の前でここにいない近衛を裏切者と喚く"側近"の声がしていたが、銃声とともにそれも静かになった。
 ぼくは窓の外を眺めている、いずれ空から落ちていく。

 ただ疑問があった。

 帝国はなぜ大砲を用いないのか、なぜ一部の精兵だけで突貫してきたのか、なぜ近衛は今日に限って誰一人いないのか。
 占領するにせよ、ただぼくの首だけを狙うにせよ、どこかおかしいとしか感じられないあたりにぼくの王の器のなさを感じられる。
 そうしていると、固く閉じられた戸がついにこじ開けられる音と、足音が背中にぶつかった。

「私をこれからどうする?予想だとそうだね……、サンテネリに悪政を敷いた暴君として首でも晒される。それが私に用意された"物語"だと思うけれど」

 もう取り繕う意味もないと、久々に口にしたぼくとしての言動に、自分が思いのほかホッとすることに気づく。
 これで終わりだという、安堵が――。

「いいえ」

 その背に叩きつけられた言葉で跳ね除けられた。
 ぼくはその声に驚きと共に振り返った。
 だって、この時代で戦場に出るのは男なのだ。断じて……。

「私は運命を信じません。物語を。決して」