タテガキ

3町屋由理(「地に落ちて死なずば」)

2026/07/14 12:11 公開

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わが魂を釘づけしといて遠く去りかれの名がいま世にうたはれる (前川佐美雄『植物祭』)



■評
 お分かりでしょうか。由理くんですね(深い頷き)。
 もはやこれ以上の解説は無用と思われます。
 すみません嘘です。さすがにもう少し説明します。

 この歌を知ったのは『推し短歌入門』(榊原紘/左右社)からでした。
 そのものずばり「イメ短歌」の例として引かれています。
 著者の榊原先生はこの歌を知って『逆転裁判』の成歩堂龍一と御剣怜侍を思い浮かべたそうですが、サ人共の末席を汚す自分としては由理くんを想起せずにはいられませんでした。

 町屋由理はジュール・レスパンではなく、「ぼく」もグロワス陛下ではありません。
 現在の二人はただの友として在り、サンテネリの歴史は由理くんの中にしかない。
(まあ王妃がたもいらっしゃるのですが、由理くんは最近までそれを知らなかったので。というか知ってても彼の場合、先方に何か言われない限り、あんまり気にしてなさそうですね?)
 いっそすっぱり全部忘れて、本人が申告したとおり、兄のように社長を慕って生きれば十分なのでは?? この人生で為すべきことは他に探したまえよ?? とぼんくらの読者としては思うわけですが……できなかったんだねえ……。
 ジュール・レスパンが町屋由理になって、サンテネリという国が存在しない世界に在ってもなお、グロワス十三世の名が世にうたわれることを望む。それほどに魂が捕らわれている。
 彼の真の偉大さを、少なくとも自分だけは理解している。たとえ大衆に受け入れやすい形に存在を「翻訳」してでも、その偉大さにふさわしい賞賛を求めずにいられない。なぜならそれは、かつてサンテネリで為しえなかったことだから。
 レスパン殿が執念深いのか、グロワス陛下が罪深いのか、どっちなんだこれ。

 他の四人のような、形としてわかりやすい「恋愛」「結婚」のようなゴールが存在しない分、由理くんと社長の関係はかえって泥沼感があるな……と思います。大丈夫ですか社長。そのうち由理くんのストーカーとかに刺されませんか。個人的にはベランダから飛ぶよりそっちのほうが心配です。

 なお、『推し短歌入門』ではもう一首、前川佐美雄の歌が引かれています。
 そちらの歌については、あまりにもレスパン殿のイメ短歌だったため、後日別項でご紹介したいと思います。