第2話 ぼく(「地に落ちて死なずば」)
2026/07/07 12:20 公開
私よりきらきらさせる人がいる 私がやっと拾った石を (枡野浩一『枡野浩一全短歌集』)
■評
一度でも何かに真剣に挑んで敗れたことがある人なら、読んだ瞬間吐血するのではないだろうか。
自分がやっとの思いで拾ってきた、それだけでは輝かない石を、いともたやすく集めてくる人がいて、しかも自分の拙い磨き方では到底敵わない光り方をさせる。何なら集めてきた段階で、磨く前からすでにきらきらしてたりする。
あっ何か書いてるだけで死にたくなってきた!!! ちくしょうくたばれ!!!!!(クソデカボイス)
しかしここで「クソが!!!!!」と脊髄反射で叫んで遮二無二走り出すような人間であれば、多分ベランダから飛ぶようなことはないと思うのです。
「ぼく」こと社長は、きっと「自分よりきらきらさせている」「それができる人がいる」ということを、ただ静かに受け取って、噛み締めてしまう。なまじ賢いが故に、目を逸らせないし誤魔化せないし責任転嫁もできない。勢いだけで跳ねのけるような愚かさも今では持てない。そうして重みに耐えられなくなった結果、もう選べる方法はほとんどない。
やっと拾った石を握りしめて、今にも落ちそうな危うい線の上でぐらぐらしているのが社長なのだと思います。
しかし同時に「地に落ち」は、「ぼくよりきらきらさせる人」たちが突然社長の手を引っ掴んで手錠をかけた上で線の内側へ引っ張り戻し、何なら線自体を埋め立てて強制消去、一方的にルール変更してしまうお話でもあります。
そりゃ混乱するし怒るだろうし何よりホラーでしょう。お疲れさまでした社長。とりあえず諦めて幸せになってください(突然の裏切り)