第9話 ぼく③(「地に落ちて死なずば」)
2026/09/01 09:19 公開
あやまちを重ねて命あることの奇跡のきょうを生きますように(枡野浩一『枡野浩一全短歌集』)
■評
本条先生が『地に落ちて死なずば』タイトル回のイメージエンディングテーマが、Mrs. GREEN APPLE「僕のこと」だとポストされていたのを見て、この歌で本連載の『地に落ちて死なずば』篇を終えることを決めました。
地に落ちなかった「ぼく」は、独りにはなりませんでした。
そして補遺では、いつもどおりのひねくれた表現ながら、それを素直に「幸せ」と呼んだ。
過去も未来も考えず、「この瞬間」という極小の点を連ねて生きている今について、「人であることをやめてしまった」などと評していますが、これはむしろ自虐というよりある種の惚気のように思えます。
だってねえ、社長、思うんですけど。
過去も未来も、結局は現在を積み重ねてできるものではないでしょうか。あなたが「極小の点」と呼ぶ現在を生き抜くため、そしてそれを集めて過去に変え、いずれ来る未来につなげるため、誰もが持てるすべてを振り絞ってここに存在している。いつか過去や未来に変わる「この瞬間」を生きるために、何かや誰かについて思いを馳せるなら、それはそのまま過去や未来について考えることと同じではないですか。
誰かと生きる選択をしたあなたは、これ以上ないほど人間的に見えますよ。
わざわざ言うのは野暮かもしれませんが、どうも社長は大事なことほど言葉にされないような気がしますので。「時折お言葉が不足なさいます。絶望的に不足なさいます」というやつですね! 反省してね! コミュニケーションの不足は対人関係では致命的ですよ!! 大事なものは大事にしないと駄目ですからね!!
そして、どうかあなたの幸福な死が、できるかぎり長く続きますように。
けして交わらない遠い世界から、切にお祈りしております。